心と身体の回復に効果的な園芸治療とは?園芸治療の歴史やうつ病改善効果もご紹介

コロナ禍でおうち時間が増え注目されている園芸ですが、歴史を辿ると古くからうつ病は精神科の治療法として用いられていたことがわかります。自然と触れ合うことで心と身体の健康を促進する園芸治療についての歴史や効果などをまとめました。

園芸治療とは?

園芸治療とは、草木や花、身の回りにある自然との触れ合いを通じて心の健康と身体の健康の両方を健康を図る治療法です。アロマセラピーなどと同じく「癒し」の効果によりストレスを緩和し、社会生活への復帰を目指します。

園芸治療の目的は?

園芸治療はうつ病の他にも、知的障害・身体障害・精神障害を持っている人や薬物依存など、社会生活への復帰を目指している人へ以下の損なわれた機能回復を目的に行われます。

園芸治療には植物を育て、自然と触れ合い楽しみながら、神経や身体を刺激する要素や社会的健康を育む要素は含まれます。

・日常生活に必要な能力の維持や向上
・生活の質の維持や向上
・認知機能の維持や向上
・ストレス緩和
・運動不足の解消

園芸治療士とともに計画し治療する

①カウンセリング
②園芸療法士とともプログラムや目標を決める
③治療開始
④治療の観察や記録
⑤園芸治療の評価

園芸治療の歴史

園芸治療は新しいものではなく古くから利用されてきたものです。

園芸は、作業療法の種目の一つとして歴史と共に古くから利用されおり、治療的利用は18世紀後半~20世紀にかけての道徳療法(moral treatment)興隆のなかで、精神障害や知的障害がある人たちにもちいられたのが始まりとされています。

戦争中は兵士たちのリハビリステーションでの需要が高くあり、傷痍軍人の社会復帰を目的として、再び日常生活を送るため音楽や絵画などの作業の中から園芸も治療として加えられました。

1950年代アメリカで誕生

アメリカでは2度の世界大戦後から、兵士たちへの治療法として用いられ、1950年代から大学で園芸治療の講義が行われ始め、1973年にアメリカ園芸療法協会(American Horticultural Therapy Association:AHTA)が設立されました。

ヨーロッパでは1978年にイギリスで英国園芸治療法協会(現THRIVE)が設立されました。

元々ガーデニングや園芸の歴史が長いヨーロッパでは障害を持つ人への治療目的のみならず、健常者も日常生活の一部として園芸やガーデニングを楽しむ習慣があります。

1990年代に日本で導入された

日本では1900年ごろに精神病棟で知的障害者の療養教育の一環として用いられていました。また1950年ごろまでは農耕作業が結核で行われていました。

日本で園芸治療という言葉が浸透したのは1990年代以降で、1993年には日本で初めての外国人の専門家による園芸治療に関する講義かいが行われ、バージニア工科・州立大学園芸学部のダイアン・レルフ博士が来日しました。

その後2008年に日本園芸治療法学会が設立されました。

うつ病における園芸治療の効果

植物や自然と過ごすことで心地よいリラックス感や、植物を育てることを通じ責任感や役割を果たすことからうつ病の改善法としても用いられます。

では、うつ病において園芸治療はどのような効果があるのかを見ていきましょう。

 

ストレス軽減や意欲回復、運動不足解消など

季節を感じながら植物を育て流ことで穏やかな精神を取り戻し、五感を適度に刺激することで神経だけでなく気管系などの身体の各機能に良い効果を与えるとされています。

植物や自然と触れ合うことでリラックス効果を促しストレスを緩和できるため、精神が安定すると同時に、植物を育てるには体力も使います。筋トレや運動する習慣を無理矢理付けなくても適度に身体を動かせるため、運動不足の解消にも効果的です。

また、植物はしっかり育てないと枯れてしまうため、役割を果たすという役目から意欲回復の促進にも繋がります。

コスパが良く変化が楽しめる

園芸治療はコスパが良く、狭いスペースでも始めやすいのが特徴です。自宅で治療を行う場合でもベランダなどの狭い空間でも始めらることや、今では100均一などでも園芸セットなどを揃えることが可能であるため、手が出しやすいもの良い点です。

施設や病院で治療を受ける場合は、他者との関わりが増える

園芸治療は病院や施設などで治療を行う場合、他者との関わりが必然となるため、自分以外の人と触れ合う機会を設けられます。

うつ病の場合、引きこもりや他者との関わりを遮断する傾向があるため、自分から無理に他者との関わりを持とうとしなくとも、他者とのコミュニケーションを促進することができます。

他者とコミュニケーションをとるということは社会性も高められるため、社会復帰を目指す上でとても効果的とされています。

うつ病当事者だけでなく、周りの人の気持ちも安らぐ

園芸治療はうつ病当事者だけでなく、その周りの人へも効果的とされます。

うつ病当事者を支える周囲の人間も、少なからずストレスや悩みを抱えることがあるでしょう。特にうつ病などの精神的な障害を持つ人の近くにいる人は、感情が移りやすいとされるので、一緒に園芸治療に取り組んだり、手伝うなどをすると、気分が晴れうつ病や重症化を防ぐとされています。

 

健常者出会っても植物を育てる・触れることは心身の健康や認知症予防などにも良い点がたくさんあるため、生活の中に積極的に取り入れることをおすすめします。

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